はじめに

こんにちは、テクノロジー&イノベーション本部アプリケーション開発部の1年目の横山です。 所属するアプリケーション開発部では、いくつかのプロジェクトをスクラム開発で進めています。 かくいう私も自社のサービス開発PJに従事し、スクラム開発を行っています。

さて、先日、私を含めたTIS(8名)・インテック(4名)にて株式会社永和システムマネジメント様のAgile Studio Fukui(以降、「ASF」と略記)にお邪魔してきました。

永和システムマネジメント様には、平鍋健児さんをはじめ、 日本におけるアジャイルの有識者やアジャイル開発経験が豊富なエンジニアの方が数多く在籍しています。 またアジャイルな開発の経験は15年以上にも及びます。

ASFは、永和システムマネジメント様がアジャイルに関連する教育・開発支援等のサービスを提供している拠点になります。

アジャイルな開発に取り組んでいるTISの面々が新たな知見を得るべく、 永和システムマネジメント様に開発現場の見学と社員の方々との意見交換の機会を設けていただきました。

結果、我々TISの開発においても取り入れていきたい場面が多く見受けられ、大変充実した1日になりました。

本稿は、永和システムマネジメント様の活動を知り、我々が学びになった考えや活動を紹介するものになります。

永和システムマネジメント様の組織紹介

代表取締役社長である平鍋健児さんから、株式会社永和システムマネジメントの組織紹介、および、 理念から現在に至るまでの活動等について語っていただきました。

米国のユーザ企業、日本のWebサービス企業に関する開発形態や、日本のユーザ企業とITベンダーに求められるであろう将来の開発形態、それに加えてASF開設の経緯についても話していただきました。

ASFをアジャイルな拠点として開設したという話を聞いた時、イノベーションをおこすために、私にはどんなマインドセット(姿勢・意識)が足りないかを考えさせられました。

ユーザ企業とITベンダーの開発形態において、 変化が激しく不確実な時代に価値あるサービスの提供やイノベーションの実現には、今以上に両者が密に連携してビジネスを進めることが必要だと私は考えています。

その上で、お話していただいたアジャイルな拠点としてのASFは、 ビジネス側のステークホルダーと開発側のエンジニアが一堂に会して、ビジネス価値の最大化を両者が共に追求する場所が必要だと見据えて開設されたものだと捉えています。

その場では双方の対話を繰り返すことが重要で、それが価値あるビジネスの創出につながると感じました。 密に連携したビジネスを進めるためにはお互いの立場を尊重しながらも、対話する姿勢が必要不可欠だと感じ、大変勉強になりました。

強く印象に残ったのはASFの「共創/共育」というキーワードでした。 「共創/共育」というのは、共に開発をして共に成長していくという考え方で、 それはTISが進めているオープンイノベーションの実現に通じるものがあったので印象的でした。

将来の内製化・技術転換に向けたAgile Studio Fukuiでの活動

Agile Studio Fuikui のディレクター兼CTOの岡島幸男さんに、 ASFを拠点として具体的にどのような活動を行っているかを発表していただきました。 

ASFでは、アジャイルに特化したエンジニアチーム(※1)が アジャイル開発の教育・開発支援サービスを行っています。

アジャイルを体験したい、アジャイルの有識者の方々と共に開発したい等を思っているお客様に向けてサービスを提供していました。

ASFのサービスを通してお客様にどのような形で貢献したいかについて、以下の様に語っていただいたことが特に印象的でした。

内製化やDXを進めたい。けれどもアジャイル経験がなく、アジャイルをどのように進める、もしくは活かせばいいかはっきりとした答えが見つからない。
そういった課題解決の糸口としても貢献したい。

先に紹介した平鍋さんの発表に続いて岡島さんの発表をお聞きし、 ASFでは内製化支援や技術転換の推進に対する考えをもとに一貫した活動をされていることがよくわかりました。

驚きを隠せなかった開発現場の見学

次に、ASFの開発現場を見学した内容をご紹介します。 我々TISにはない設備や仕組みが多く、メンバー一同大変驚きました。

撮影許可をいただきましたので、写真を載せながら、 個人的に新鮮味や驚き、興味深いと感じた特徴的な場面をピックアップしてご紹介します。

開発現場にお客様の写真を貼付!

私が最も驚いたのはホワイトボードにお客様の写真を貼っていたことです。

なぜお客様の写真を貼っているのですか? と質問すると、現場のエンジニアの方が次のように答えてくださりました。

プロジェクトの開始頃、お客様との飲み会を開いたんです。
そこでは、たわいない話からお客様がどのようなことに困っているのか等、様々な話をしました。
話していくと、お客様の中で誰が今最も困っている方がわかりました。
そして、我々としてはその困っている人のためにがんばりたいと思ったので、モチベーション維持のためにも常に見える位置に貼っています。
もちろん、こうやって見学に来られた方にもお見せしていいとお客様から了承も得ています(笑)

お客様の写真を貼っている現場に遭遇して、正直衝撃でした。

確かに、本当に困っている人のために頑張ると意識はモチベーション維持につながるでしょう。 しかし、お客様の写真を貼ろうという発想は考えたこともなく、ユニークで興味深いと感じました。

集中できるこだわりを追求したモブプログラミング専用スペース

次に紹介するのは、モブプログラミング専用スペースについてです。

複数人で同時に行うプログラミングのことをモブプログラミングと言います。

この部屋は執務室内にあるものの、執務室とは大きな壁により隔たっています。 このコンセプトは、開発に集中できるようにと若手の方々が考え出したそうです。 写真の通り、大きなディスプレイが2つ備わっていました。

実は、写真右側の椅子はあえてくつろげない設計にされています。 実際座ってみると、確かに座りやすいとはいえない構造にはなっていたので驚きました。

このように、開発に集中できるようなこだわりがたくさんあり、羨ましい気持ちに少しなりました。(笑)

手書きでバーンダウンチャートを作成するこだわり

次に、手書きのバーンダウンチャートについて紹介します。

ASFの開発現場では、バーンダウンチャートを手書きで作成されていました。

当初は、Excel等のツールを使用して自動で描画されるようにしていたそうです。 しかし自動作成すると、開発メンバーの誰もがバーンダウンチャートを見なくなり、 チームの状況を誰も把握できていない状況に陥りました。

そんな状況を打開するため、面倒であるのはわかっているものの、バーンダウンチャートをメンバー全員で作成することを通して、 誰もがチームの状況を把握できるように努めているそうです。

注意すべき情報のアクセスを意図的に不便にする工夫は面白いなと感じ、 そういった考えを実際の仕事に取り入れたいなと思いました。

壁に記録して重要情報を常に見える化

次に紹介するのは、壁紙カンバンと呼ばれるものです。 壁が全面ホワイトボードになっており、最近のKPT(※2)やリリースバーンダウンチャート(※3)の記録を残していました。

壁にチーム運営の大切な情報を記録することで、いつも忘れず意識して活動できます。

 

私のチームでも朝会等の打ち合わせの際、必ず確認する資料にチーム運営の情報(ふりかえりの結果等)を記載しています。 しかし、壁に記録していると目にする頻度が断然違うだろうなと思いました。

Agile Japan 2019にも登壇! 一括請負契約PJにスクラムのプラクティスを導入したお話

次に、ITサービス事業部の岡島一樹さんによる「受託開発でのアジャイル奮闘記」のセッションを再演していただきました。 本セッションはAglie Japan2019にて登壇したもので、登壇時にはお客様も1人交えて登壇したそうです。

約2年間の一括請負契約PJにおいて、自己組織化されたチームを目指すべく、スクラムのプラクティス(※4)を取り入れたお話をしていただきました。 たとえば、お客様への進捗報告には、途中からガントチャートを廃止してバーンダウンチャートで行っていました。

そんなスクラムプラクティスの導入の過程では、お客様との信頼関係を強固に築く様々な工夫も伺えました。 期日内に適切な品質の成果物を納品し続けることはもちろん、 GitHubやチケットのやりとり等、コミュニケーションツールの中身をお客様に全て公開することで、情報の透明化を図られていました。 また、お客様と一緒に振り返り等のコミュニケーションを定期的に開催していたそうです。

これらの工夫の結果、お客様と一体となってイベント登壇できたという事実は、 実施した取り組みが有効なものであり、お客様との良好なパートナーシップを結ぶに至った証拠であると私は考えました。

発表資料には、自己組織化されたチームになるまでの軌跡や実施した工夫がふんだんに盛り込まれており、 本稿の読者の方にとっても参考になるのではないでしょうか。

様々なお話ができた意見交換会

発表していただいた方々をはじめ、 永和システムマネジメント様のエンジニアやリーダー層の方を交えて、 我々と意見交換の機会を設けていただきました。

TISメンバーの課題やお客様との関わり方、成功・失敗談等、地に足のついた様々な議論ができました。

意見交換後のアンケートでは以下の様な感想が挙がり、私だけなく、他のメンバー全員が有意義な時間を過ごせていたことがわかりました。

  • 「永和システムマネジメントの皆様とフランクに意見交換ができました」
  • 「いろいろな悩みに答えていただけてよかったです」
  • 「最高の時間でした。日頃悩んでいることが皆さんの目にどう映るのか心配でもありましたが、真摯に向き合ってもらえました」
  • 「理想と現実の間の落とし所を見極めつつ、それでも理想に向かって改善をすすめるべきなのだということを議論の中で見出せました」

議論を通して、自己組織化されたチームになるためには、やはり一筋縄ではいかない側面があると私は実感しました。 しかし同時に、そのようなチームになるために何が必要であるかを知れました。

それは、メンバーの心理的安全性を高く保つことや、チームの振り返り等の改善活動を継続的に実施することでした。

この議論を契機に、私は自分のチームが自己組織化されたチームになるべく、議論で挙がった効果的な活動に対してより一層力を入れるようになりました。

まとめ

永和システムマネジメント様では、メンバーが活き活きと開発を進められるような環境整備を心がけ、様々な工夫が施されていることがわかりました。 この環境整備には、現場見学の章でご紹介した設備等の物質的な側面だけでなく、 「お客様をどのように巻き込んでいくか」、「お客様との信頼関係をどう築いていくか」、そして「開発メンバー全員がどうすれば主体的に活動できるのか」といった 心理的な側面も含みます。 これらの工夫と改善を繰り返すことによって、自己組織化されたチーム、活き活きと開発できるチームが作られるのだろうと実感しました。

永和システムマネジメント様のASFで体験した施策や工夫はこれからの仕事に活かしていきたいです。

訪問後に自分の仕事に対する姿勢や物事の視点を見直すきっかけになり、また同時に取り入れていきたいことが多く見出せた、大変貴重な1日でした。

最後に、このような機会を設けていただいた永和システムマネジメント様には、この場を借りて深く感謝いたします。 また、今回の機会を永和システムマネジメント様のブログにてご紹介いただき、ありがとうございました。

注釈

※1:「アジャイルに特化したエンジニアチーム」とは以下の要素を満たすチームのこと。

  • 経験豊富なアジャイル/クラウド技術者が、コーチングから開発まで対応
  • PoCから商用開発まで、幅広いニーズと技術領域をカバー
  • 効率性と透明性を追求し、お客様とワンチームでビジネスをともに成長させる。

※2:KPTとは、ふりかえりを行うことによって、仕事やプロジェクトの課題改善を加速させるフレームワークの1つ。

  • KはKeepの略
  • PはProblemの略
  • TはTryの略

※3:リリースバーンダウンチャートはアジャイルなプロジェクトで用いられることが多く、作業の進捗状況を可視化した図。

※4:ここでは、「スクラムのプラクティス」とはスクラム開発における特有の具体的な活動のことを指します。


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