ワークショップ参加概要

1.はじめに

本記事では、近年注目を集めているSF思考プロセスを、ワークショップでのアイディエーションに活用した事例を紹介します。 今回、SF思考プロセスを用いて参加したワークショップは、京都大学サマーデザインスクール2023となります。

2.京都大学サマーデザインスクールの概要

「京都大学サマーデザインスクール」は、複雑で多様な現代社会の問題を解決するために、異なる分野の専門家と協働し、「プロダクトやグラフィック」だけでなく、「社会システムやアーキテクチャ」など幅広い分野でデザインできる人材の育成を目指すデザインワークショップです。 3日間の集中型プログラムで、1日目と2日目はグループワーク、3日目はプレゼンテーションが行われ、参加者全員の投票により最優秀作品が選ばれます。

本プログラムは、「実施者」と「参加者」によって構成されます。 「実施者」は京都大学の教員と協力企業の研究者・実務家となります。 「参加者」は例年、大学生、大学院生、教員、研究員、一般社会人が参加します。

私たちTISは、「京都大学サマーデザインスクール」の運営主体である「京都大学イノベーションコンソーシアム」の一員に下の2つの理由から加盟しています。

・“専門領域を超えて協働し社会を変革できる突出した専門家(十字型人材)を養成する”といった目的への賛同

TISインキュベーションセンターにおけるオープンイノベーションによる新規事業の創出

3. TISインキュベーションセンターの実施テーマ

私たちTISインキュベーションセンターは、「SF思考プロセスを用いて未来の儀式の在り方を考える」というテーマで、「実施者」として2023919日から3日間にわたり、 このデザインワークショップに参加しました。 本テーマへの「参加者」は、大学生1名、大学院生3名、社会人1名、「実施者」は当社2名でした。 また、準備段階から当社他1名がサポートを担当し、実質3名体制で取り組みました。 今回の参加チームは当社を含め全12チームでした。

4. 参加の目的

今回私たちは、主に以下3つの目的を持ってワークショップに参加しました。

・SF思考プロセスのアイディエーションへの活用

・儀式を課題とした事業アイデアの探索

・自身の学びを文書化し、部署や組織全体と共有する

ファシリテーター実施に向けた準備

1.実施テーマの作成

4か月前からテーマ作成を始め、何人かの上司や同僚からアドバイスを頂き、今回のテーマが完成しました。 私が提案した「未来の儀式」という出発点から、サポートメンバーが提案した「SF思考プロセス」を組み合わせ、さらに後から加わった「共同実施者」と相談して、「死生観と儀式」をテーマの中心に据えることにしました。 ワークショップ終了後に感じたことですが、実施テーマ作成からプロセスの作成はワークショップにおける大半の部分を占めていたと言っても過言では無いかもしれません。

2.プロセスの作成

私が作成した叩き台を基に、他の2名のメンバーと相談しながら改善を繰り返しました。 テーマと同様に、メンバーの協力を得て、準備段階で良い方向に改善できたと感じています。 結果として、特にアイスブレイクを丁寧に構成したことにより、「参加者」の心理的安全性が確保され、発言しやすい雰囲気が生まれたと思っています。 単なる自己紹介に留まらず、テーマの特性上、「死生観や葬儀」に対する考え方を段階的に深く共有したことで、「参加者」一人一人の柔和な人柄を自然な流れで理解し合うことができた点が、大きな要因だと考えています。

また、進行補助役として参加してくれた「共同実施者」が生成AIの専門家であったことも進行に大きく影響を与えました。 事前に進行上足りない役割を生成AIに担わせるためのプロンプトを提案してくれただけでなく、当日の細やかなサポートのおかげで、スムーズな進行を行うことができたと感じています。

3.フィールドワークの設定

SF思考プロセスを用いて未来の儀式の在り方を考える」といったテーマを「死生観と葬儀」を中心に実施するにあたり、最初に思いついたのは、京都のお寺におけるフィールドワークの実施でした。 京都と言えばお寺と言っても過言ではないほど、多くのお寺が存在します。 リアルなお寺の雰囲気を体感しながら、和尚様の説法をお聞きしたいと考えました。 しかし、この時期、実施会場近隣のお寺はお彼岸で忙しく、願いは叶いませんでした。

4.準備段階におけるワークショップへの参加

私自身、ワークショップへの参加経験も乏しく、ワークショップにおけるファシリテーターとしての経験は初めてのものでした。 そのため、当初は不安も大きく事前にいくつかの他のワークショップへ出席しました。 またサポートメンバーの勧めから、書籍やWEBでの学習を行い「ワークショップ」と「SF思考プロセス」に対する知識を深めていきました。

※参考書籍1:これからはじめるワークショップ 堀公俊 著

※参考書籍2:未来は予測するものではなく創造するものである 考える自由を取り戻すための<SF思考> 樋口恭介 著

ワークショップ実施内容(序盤)

1.全体プロセス概要

2.自己紹介とアイスブレイク

当初、自己紹介からSF思考を絡めることを想定していましたが、チームメンバーとの相談の結果、一般的な自己紹介から丁寧に、複数の質問を投げかけることから始める方向に修正しました。その後、「このテーマに参加したきっかけ」や「儀式とは何のためにあるのか?」といった質問を投げかけることで、徐々に本題に入っていきました。この際、儀式や死生観に正解はないことを強調し、「参加者」が自由に意見を出せる環境を整えることを意識しました。その後、「儀式と死生観」に関する質問を行いましたので、以下いくつかの質問をご紹介します。

・あなたは死に対してどんなイメージを抱いていますか?

・あなたは生きることにどんなイメージを抱いていますか?

・もし、あなたの愛する存在が亡くなったら、どのように悼む時間を過ごしますか?

3.SF思考プロセス・ミニレクチャーの実施

SF思考プロセス」は、サイエンスフィクションの持つ想像力や未来社会を描く力を活用し、新しいビジネスアイデアや産業の活性化を目指す考え方です。具体的には、「参加者」が一緒に未来の社会や出来事を考え、それを新しい産業や街づくりに落とし込む方法です。それらを法的、社会的、技術的な変化を考慮した上で、50年後30年後15年後というように未来から現在に向かってバックキャスティングで思考を行います。

最終的には、グループで一つのSFストーリーを作成し、新規事業のアイデア出しにつなげるなどの活用法が試みられています。このプロセスを通じて、未来社会に暮らす人々のための新たなツールやサービスのアイデアを創り出します。

4.妄想トレーニング

SF思考プロセス」のミニレクチャーを行った後、全員で未来に向けた妄想を膨らませるために質問を投げかけました。また、この段階になると積極的なメンバーは他者が出した考えに対して、さらに考えを深める意見を出してくれるようになりました。これによって全ての「参加者」の発言の質も自然と高められていったように感じています。設定した質問のいくつかを以下にご紹介します。

・もしVR空間の中で生き続けられるとしたら、生き続けたいですか?

・もし延命と長寿の技術が生まれ、200年間生き続けられるとしたら、生き続けたいですか?

・なぜ人間は仮想世界に、そして現実世界に、自分達にそっくりな存在を創り上げようとするのでしょうか?

・あなたは自分の死後もデジタル空間にいるもうひとりの自分を残したいですか?

これらの問いは一見、SF的な考えを問うだけの内容に見えますが、アイスブレイクで行った問いと同様に、解答者の人間性が非常に良く現れる内容となっています。結果として、ここまでの回答内容から「参加者」の様々な個性を垣間見ることができました。

5.技術要素の共有

【ムーンショット目標】以下の内容を内閣府が掲げています。

2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現」

○誰もが多様な社会活動に参画できるサイバネティック・アバター1基盤

2050年までに、複数の人が遠隔操作する多数のアバターとロボットを組み合わせることによって、大規模で複雑なタスクを実行するための技術を開発し、その運用等に必要な基盤を構築する。

2030年までに、1つのタスクに対して、1人で10体以上のアバターを、アバター1体の場合と同等の速度、精度で操作できる技術を開発し、その運用等に必要な基盤を構築する。

○サイバネティック・アバター生活

2050年までに、望む人は誰でも身体的能力、認知能力及び知覚能力をトップレベルまで拡張できる技術を開発し、社会通念を踏まえた新しい生活様式を普及させる。

2030年までに、望む人は誰でも特定のタスクに対して、身体的能力、認知能力及び知覚能力を拡張できる技術を開発し、社会通念を踏まえた新しい生活様式を提案する。

※引用元:内閣府.ムーンショット目標1,https://www8.cao.go.jp/cstp/moonshot/sub1.html

今回はムーンショット目標で使用されている技術要素を中心に、物理的技術、デジタル技術、未来に実現されるであろう様々なテクノロジーの知識共有を行いました。一般的に聞き慣れたワードを中心に、普段は滅多に聞くことのないワードまで丁寧に説明を行いました。

ワークショップ実施内容(中盤)

1.今回のテーマとマインドの共有

私がいくつかのワークショップに参加して実際に体験したことですが、目の前のプロセスに集中しすぎると、本来向かうべき方向を途中で見失うことがあります。そこで、適切なタイミングでテーマを反復して確認しながらワークショップを進行させる必要があります。また、そのテーマにどのように取り組むべきかを同時に共有することも大切です。今回はマインドの共有と共に、ピーター・ティールの「ゼロ・トゥ・ワン」の一節を紹介し、メンバーのマインドを固める一助としました。

【テーマ】

「未来の儀式の在り方とは?」SF思考を活用し、未来の生活様式を予想した上で、将来あるべき儀式の姿を具体的に妄想していきます。最終的には妄想した10年~15年後の儀式の姿を9コマのSFストーリーに落とし込むことを目標とします。

【マインド】

・できるだけ投げたことのない方向にボールを投げる。そして投げたボールがどこへ行ったのか探しに行く

・議論をしながら「チーム全員の妄想を爆発させる」

・問題解決をしようとしないこと。「イシューからはじめない」未来も同様の問題があるとは限らない

・ワクワク感、楽しさ、ばかばかしさ、リラックス、自由な発想、ストーリーの重要性、失敗の可能性を楽しむ

【参考】ピーター・ティール「ゼロ・トゥ・ワン」の1節

・ほかの生き物と違って、人類には奇跡を起こす力がある。僕らはそれを「テクノロジー」と呼ぶ。テクノロジーは奇跡を生む。それは人間の根源的な能力を押し上げ、より少ない資源でより多くの成果を可能にしてくれる。人間以外の生き物は、本能からダムや蜂の巣といったものを作るけれど、新しいものやより良い手法を発明できるのは人間だけだ。人間は、天から与えられた分厚いカタログの中から何を作るかを選ぶわけではない。むしろ、僕たちは新たなテクノロジーを生み出すことで、世界の姿を描き直す。それは幼稚園で学ぶような当たり前のことなのに、過去の成果をコピーするばかりの社会の中で、すっかり忘れられている。

※参考書籍:ピーター・ティール.ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか.NHK出版,2014/09,253ページ

2.ストーリーの作成

未来の儀式を考えるにあたり、事前に、50年後⇒30年後⇒15年後の未来を段階的に妄想し、各時代の社会や生活がどのようになっているかを、1500文字以内の文章に落とし込んで頂くことにしました。SFストーリー作成においては、下に示すようなアウトライン、すなわち「構成要素」、「物語の流れ」、「5WH」を明確にして物語を描いていく必要があります。

・アウトラインの作成[構成要素][流れ][5W1H

Why:最も描きたいもの:未来の生活がどうなっているか?

When:時代は:50年後⇒30年後⇒15年後

Where:舞台はどこか?

Who:主人公は?

What:現実と物語の差異は?

How:差異はどのようにおきているか?

ChatGPTの活用

今回のワークショップにおいては、50年後⇒30年後⇒15年後の3つの時代におけるSF小説を作成する時間的な余裕が充分ではありませんでした。そのため、ChatGPTを活用してSF小説を作成することを試みました。

この試みは、SF小説を書いたことがない「参加者」でもプロンプトをアレンジすれば、一定水準の小説を書けるといった点で大きな役割を果たしました。また、AIによるアウトプットに満足がいかない場合は、プロンプトを調整し何度も試行錯誤することによって、アウトプットのクオリティを上げることができました。具体的には、各時代ごとに下に示したプロンプト作成例を作成し、ChatGPTに文章の作成を指示しました。

~プロンプト作成例~

【コンセプト】 遺伝子操作で優秀な人材を輩出することに拘った大国の争いが起こる未来の世界で、クローン操作されずに育った主人公の数奇な運命を描く。混沌とした世界で生きる人々の生と死を描くSFストーリー。

【時代】2070

【登場人物】 哲夫:8歳の少年。生まれた時から孤児院で生活している。ひげじいにも懐いていた。 アキラ:24歳。血は繋がっていないが、哲夫のことを実の弟のように世話をしている。哲夫と同じ孤児院出身。 ひげじい:哲夫とアキラの住む町で、廃棄されたアンドロイドの部品を集めて生計を立てている。意外な展開で亡くなる。 葉子:アキラと同じ24歳。実家がメタバース上で営む中古品店を手伝っている。アキラのことが気になっている。

【テクノロジー】 先進国では、生まれてくる人間のほとんどが遺伝子操作を行い、知能や外見、共に高度な水準を持って誕生し、寿命が200歳に伸びていた。同時にAIを搭載したアンドロイドが人間同様の権利を保持し、人類と共に生活を送っていた。

【法的・社会的要素】 世界は混沌に満ちており、大国は直接の戦闘を避けるためバーチャルな世界で水面下の覇権争いを繰り返していた。

【補足事項】 この時代、死を迎えた人間もバーチャル上に自己のデジタルツインを残し、死の定義が過去数十年とは変わりつつあった。

3.未来の儀式を妄想

「参加者」にはSF小説を作成後、各時代の死生観がどのように変化したのかを想像してもらいました。さらに、作成した小説の共有と意見交換を行うことで、未来の生活に対する妄想を深めてもらいました。

次に一般的な仏教における葬儀の流れを確認した上で、作成した小説を基にして、10年~15年後の葬儀や供養のあるべき姿に関して、アイデアを出し合ってもらいました。それらを時間軸やセグメントでまとめた画像が以下となります。

4.9コマストーリーの作成

ここでは、導き出した葬儀や供養のアイデアを基に、テキストや画像・イラストを使用して、各自で9コマのストーリーを作成してもらいました。最後に、一人の「参加者」が作成した9コマストーリーをベースに、他の「参加者」の意見を取り入れて、統合された9コマストーリーを作成しました。イラスト作成にはBing image creatorなどの画像生成AIも活用しました。現状における画像生成AIはイメージした画像やイラストを一発で生成してくれることは稀で、プロンプトを詳細に書き加えるなど幾度もの調整が必要になりましたが、「参加者」の試行錯誤の結果、最終的にはイメージに近いイラストを導き出すことができました。また、ストーリー作成には以下の注意事項を設定しました。

【ストーリー作成における注意事項】

・アイデアは絞り込む。多すぎないようにする。メッセージは明確にする。

・アウトライン(5WH)を完成させた後で検証する。

・最初の1マスは俯瞰図となる。前と後の情報が結びついていること。

・記憶に残る力強いメッセージ、インパクトのあるメッセージを入れること。

・何を目的とし、何をゴールとして描かれたものなのかを、再度明確化すること。

・誰に対して、どのような文脈で語られるものなのか?

・意味が明確で視点に新規性があり、「だから何?」という問いに答えられるストーリーであるか?

SFの楽しみは、科学的な因果関係、原因と結果のつながりを知ろうとすること。

・因果関係から外れた情報を入れないこと。妄想と論理の間を行き来すること。

5.以下に統合した9コマストーリーのテキストを紹介します。

題名:イノッチの挑戦 ~未来の葬儀に革命を起こす~

1.変化する社会

10から15年後の未来、技術は爆発的に進化した。AIの音声再現が驚異的なレベルに到達し、通信は6Gによって光速のように速くなり、軽量で安価なVRゴーグルが一般的になった。これにより、社会の生活様式は根本的に変わった。

2.イノベーション

多様な価値観や宗教観、また少子高齢化などの社会問題が交錯する現代、葬儀業界にも変革が必要だと気がついた若きイノベーター「イノッチ」が現れた。彼女は未来の葬儀を再定義し、従来の葬儀のあり方について革命を起こすことを決意した。

3.融合

イノッチは伝統的な葬儀や供養の方法の他に、新たなアイデアを模索し始めた。多様性を重視し、伝統・テクノロジー・未来志向の考え方を融合させることに情熱を傾けた。

4.仮想空間での葬儀

イノッチはまず、葬儀が仮想空間の中で執り行われる未来を予測し、仮想世界の葬儀を開発した。すると、遠くに住む家族や友人、体が不自由な人も共に葬儀を体験し、感情を共有ができるようになった。また、家族以外の葬儀、例えば著名人の葬儀や、海外で実施される葬儀にも出席できるようになった。

5.デジタルお墓

次に、デジタルのお墓を創造した。遺体や遺骨を物理的な場所に埋葬する代わりに、仮想空間内に存在する個別の追悼スペースである。ここは、家族や友人は遠隔地から集まり、亡くなった人との思い出を共有し、いつでも追悼できる。音声再生や、触る感覚の実現、視覚に訴えるテクノロジーにより、仮想空間上に故人と再会することを可能にした。

6.納骨・散骨の新たな革命

また、新たな散骨や納骨の技術は葬儀業界に革命をもたらした。遺骨を残したくない人々にも対応できるよう、ご遺体をエネルギーにリサイクルする技術や溶解技術も広まった。遺骨を残す選択も宇宙葬や風に乗せて自然界に還す方法など、納骨のアプローチも多岐に用意した。

7.供養の新しい形

供養の仕方も多様化した。仮想空間内に存在するデジタルお墓へのお墓参り。仮想空間の中での法事、埋葬した場所へ手を合わせるだけの新しい文化。故人を想う人々が、それぞれのスタイルでの供養が可能になった。毎年命日になるつきの満月の日に、月を見て故人をしのぶ。

8.挑戦

イノッチは多様な価値観を重視し、未来の葬儀文化を築く使命に情熱を注いでいた。一方で、伝統的な考え方以外を認めない人々も多く、挑戦は容易ではなかった。イノッチは、伝統的な有形のふれあいと、新しい技術を駆使した無形の融合が必要だ、ということに気付いていたからこそ挑戦をし続けた。

9.進化
イノッチの新たなテクノロジーや多様な価値観への理解。情熱と説得力あるコミュニケーションにより、徐々に人々の心をつかみ、人々は徐々に理解を広めていった。今、新しい葬儀の形が進化しつつある。

ワークショップ(終盤)

1.プレゼンテーション

最終日の午前中に、午後から行われる展示プレゼンに向けて、以下の規定に沿って展示内容の作成を行いました。

【プレゼンテーション規定】

・プレゼンは規定の範囲内(ホワイトボード横180cm、奥行45cm)に収める。

・ポスターに、2 日間のプロセス(1 日目、2 日目に何をやって、アイデアがどう展開したか等)を盛り込む。

13時半から1分以内で、プレゼンの概要を口頭で発表する。

・展示時間中はチームメンバーが交代で内容の説明を行う。

1分プレゼンについては、安定感のある社会人の「参加者」に快く引き受けていただきました。また、3時間の展示プレゼンについては、21組で持ち回りで説明を行う体制をとりました。今回、展示プレゼンにおける説明内容については、細かい指定を一切設けないことにしました。展示プレゼンの時点で、全ての「参加者」が内容を十分に理解しており、各自の言葉で説明することが可能だと判断したからです。結果として、「参加者」が予想以上に積極的に展示内容の説明を行ってくれ、見学者の皆様にも私たちのチームの意図が明確に伝わったと感じています。下の画像は展示物の全景(左)と各自が作成したSF小説&9コマストーリー(右)です。

2.リフレクションと結果発表

展示プレゼン終了後、各チームで振り返りの時間が設けられました。「参加者」からは概ね良好な反応があり、次のような声をいただきました。「SF思考プロセスは斬新だった。」、「ビジネスに繋がる可能性もあるのでは?」、「目指すべき大人像が見えてきた。」、「頭を柔らかく使うことができた。」、「SF小説を書いてみたい。」、「普段は考えない死生観について深く考えることができた。」、「安心して意見を出せた。」

一方で、「少し時間が足りなかった。」、「フィールドワークをしたかった。」、「実際のプロダクトに落とし込む方法が気になった。」といった改善点に関する意見もいただきました。結果としては、12チーム中で最優秀賞を受賞しましたが、これは「参加者」の知識と能力の高さ、何よりも積極的な姿勢と性格、そして実施者他2名のサポートに恵まれた結果だと感じています。

振り返り

1.使用ツール備品

今回のワークショップでは、事前から事後に掛けて「参加者」との情報共有にSlackを使用しました。事前の情報共有はもちろんですが、ワークショップ中の情報共有や事後のコミュニケーションにも有意義なツールとなりました。また、ワークショップ中には、ChatGPTBing image creatorなどの生成AIを適切なタイミングで使用することによって、スムーズな運営を行うことができたと感じています。細かい部分を考えると、プロジェクターの持ち込みも情報共有のためのツールとして功を奏する結果となりました。

2.目標設定に関して

・SF思考プロセスのアイディエーションへの活用:通常のプロセスに若干のアレンジを加えての使用となりましたが、イシュードリブンと比較して自由な発想ができる点が確認できました。また目の前にイシューの存在しない事象や、比較対象の存在しない課題に対しては有効な手法であると考えています。

・儀式を課題とした事業アイデアの探索:まだアイデアの種と言い切れる状態ではありませんが、現在の葬儀業界の課題感を掘り下げ、今回のアウトプットと時間を繋ぎ合わせて考察することによって、何らかのヒントが得られるものと考えています。

・自身の学びを文書化し、部署や組織全体と共有する:今回の経験は、「SF思考の活用」と「生成AIの活用」といった2点において新たな取り組みであったと言えます。これら二つのツールは、アイディエーションや調査・考察の時間短縮に充分活用できることをご理解頂けたものと思っております。

3.改善点に関して

「参加者」から頂いた言葉の通り「少し時間が足りていなかった。」、「フィールドワークをしたかった。」、「実際のプロダクトに落とし込む方法が気になった。」といった点は、改善が必要なポイントであったと感じています。特に「フィールドワークの実施」を行っていれば、お寺といった伝統的な場所を有効に活用するアイデアなど、今回とは違った結果が得られたのではないかと感じています。

4.最後に

今回このような貴重な場を提供頂いた、「京都大学イノベーションコンソーシアム」、「京都大学デザイン学大学院連携プログラム」、「京都大学教職員の皆様」を始め、「参加者の皆様」、「見学者の皆様」、「実施者の皆様」、関わった全ての皆様に向けて、この場を借りて御礼申し上げます。

また私たちTISはワークショップはもちろんのこと、協業共創など様々な形でオープンイノベーションの取り組みに挑戦しております。ご興味のある方は、当社ホームページ(https://www.tis.co.jp/group/)よりお問合せください。

※参照元1:堀 公俊.これからはじめるワークショップ.日本経済新聞出版,2019/08/19,208ページ
※参照元2:樋口 恭介.未来は予測するものではなく創造するものである ─考える自由を取り戻すための〈SF思考〉.筑摩書房,2021/07/07,272ページ