投稿日
プロトタイプ作成のプロセス
もくじ
プロトタイピングのプロセスについて1
新規事業開発におけるプロトタイピングは、デザインの忠実度(fidelity)を高めていくためのものです。
プロダクトのイメージを具体化・詳細化していくために、プロトタイプを作成し、ユーザー視点で評価し、必要な改修点をプロトタイプに反映してプロダクトとデザインの忠実度を上げていきます。
従って、プロトタイピングは反復的なプロセスになります。

プロトタイピング
プロトタイプにはさまざまな分類がありますが、本プロセスで示すのはペーパープロトからワイヤーフレーム、デザインプロトへと手法を発展させ、この忠実度を高めていく過程です。
「忠実度(fidelity)」は、完成したデザインに対してどのくらい「本物っぽいか」を意味しており、最終的なプロダクトにどのくらい近いかを指します。
| 忠実度 | メリット |
|---|---|
| 低 (low-fidelity) | ・細かな点にこだわることなく、コアとなるアイデアの表現に集中できる ・短時間でユーザーのフィードバックを反映できる ・技術的スキルを必要とせず、誰もが理解でき、修正が可能 |
| 高 (high-fidelity) | ・ユーザーにとってプロダクトが容易に想像でき、解像度の高いフィードバックが得やすい ・プロダクトを開発する前にプロダクト像が想像・共有できるようになり、開発コストの見積もりがしやすい |
例えば、初期段階の評価で重要なのは、見た目の良し悪しではなく、本質的な機能が何かという適切な判断です。
製品イメージが異なっている場合には作り直すことが必要になるため、いかに簡単に作り直すことができるかが重要なポイントになります。
忠実度の低いプロトタイプは、紙とペンだけを用いて作れます。
そうして生まれたペーパープロトを用いて、頭の中のアイデアを概要レベルのデザイン案として素早く確認でき、ユーザー体験や実現するプロダクトが視覚化されます。
視覚化できれば、チームメンバーの間でもプロダクトイメージや方向性を明確に把握できるとともに、ユーザーからのフィードバックも得られます。
一方で、忠実度の高いプロトタイプには必要なデザインやコンポーネント、インタラクションが組み込まれ、最終的なプロダクトへ近くなります。より「本物」に近いプロトタイプによって、ビジュアル、機能・インタラクションについてのユーザビリティ、ワークフロー上の問題の有無といった評価ができます。
プロトタイプ作成のフェーズ
本書では、プロダクトとデザインを明確化するために以下4つのフェーズを定義します。
プロトタイプを作って評価すれば次のフェーズに進んで良いわけではなく、評価結果によっては前フェーズに戻ってプロトタイプを修正し、再評価することも多々あります。
| フェーズ | 主体 | プロトタイプの形態 |
|---|---|---|
| プロダクト・デザインを明確化するための検討フェーズ | 事業オーナー | ペーパープロト |
| 振る舞いと認知の検討フェーズ | デザイナー | ワイヤーフレーム |
| 見た目のデザインの検討フェーズ | デザイナー | デザインプロト |
| デザインの洗練フェーズ | デザイナー | デザインプロト |

検討段階
評価基準はプロダクトによって変化しますが、コンセプトテストの尺度を基準とすることで効果的に評価できます。2
| 評価基準 | 詳細 |
|---|---|
| わかりやすさ | この商品説明は、充分にわかりやすいか |
| ニーズ合致度 | この商品は、あなたのニーズにあっていると思うか |
| 共感性 | この利用シナリオに対して、どの程度共感しますか |
| 魅力度 | この商品に対して、どの程度魅力を感じますか |
| 新規性 | この商品を目新しいと感じますか |
| 経験意欲 | 利用シナリオにあるような利用経験をしてみたいか |
| 購入意欲 | この商品が妥当な価格なら買ってみたいと思うか |
プロダクト・デザインを明確化するための検討フェーズ
本フェーズは、実質的に顧客の課題に対するソリューションが何かをアウトプットすることになるため、事業オーナーが主導し以下の順で進めてください。
- カスタマージャーニーに沿ったデザインコンセプトの策定
- デザイン対象物についてのペーパープロトを作成
- ペーパープロトと想定するユーザーの行動と見比べながら、ユーザーの課題が解決できるか、良好なUXを提供できるかを評価
プロダクト・デザインのUXを実現するための基本的構造が検討されていることが重要であり、画面間のつながりなどは十分検討できなくても問題ありません。
振る舞いと認知の検討フェーズ
本フェーズでは、ユーザーの一連の流れを想定したプロトタイプを作成し、具体的なナビゲーションのデザインやレイアウト、インタフェースの動きをワイヤーフレームとして作成します。
デザイン対象物の基本的な振る舞いを検討することになるため、デザイナーが主体となって実施することを想定しています。
見た目のデザインの検討フェーズ
本フェーズでは忠実度の高いワイヤーフレームを作成し、実際のプロダクトにより近い形でユーザーとの接点となるインタフェース、デザインの検討をします。この作業は、デザイナーが主体となって実施することを想定しています。
具体的には、プロトタイピングツールを使い、PCやスマートフォンでインタラクションを手軽に試しながら評価し、使いやすく操作を誤りにくい表現を検討します。
潜在的ユーザーに検証・評価をしてもらうことが望ましいですが、それが難しい場合は社内の協力者等の協力を得て実施することで、より多くの改善に役立つ情報を得られるはずです。
デザインの洗練フェーズ
本フェーズでは、より完成形に近い状態のプロトタイプを作成し、ユーザビリティ上の問題点を改善します。この作業は、デザイナーが主体となって実施することを想定しています。
ユーザー参加によるユーザビリティテストを実施することで、プロトタイプがどれだけ使いやすいかを評価できます。
具体的には、ユーザーの操作方法や感じ方の仮説を立て、実際の利用文脈を想定したタスクを設計し、プロトタイプを利用してもらいます。その結果、どの程度使いやすいか使いにくいかの問題が明らかになり、プロダクトの課題が発見できます。
最後に
新規事業の成功には、プロダクトのイメージを的確に形にし、アイデアを具体的な製品へと変えるプロトタイピングプロセスが不可欠です。
プロトタイプの作成により、チームはより効率的かつ効果的に、ユーザー中心の製品開発を進めることが可能になります。
- ここで定義するプロセスについては、『UXデザインの教科書』の内容を大いに参考にしました。↩︎
- 上野学、藤井幸多、『オブジェクト指向UIデザイン–使いやすいソフトウェアの原理』、技術評論社、2020。↩︎
