はじめに

web3はブロックチェーンなどの技術でインターネットを便利にするムーブメントです。TISもweb3ビジネスを推進する「Web3ビジネス企画部」を設置しました。TISはweb3関連ビジネスの支援や立ち上げを行い、新たな市場創造を目指します。

この記事ではweb3市場の多様な要素のうち、今年のトレンドになりそうなものを厳選して3つご紹介します。

ゼロ知識証明

ゼロ知識証明(Zero-Knowledge Proof、略して”ZKP”)の概念は、1980年代にシャフィ・ゴールドワッサー、シルビオ・ミカリ、チャールズ・ラカフという研究者によって初めて提唱されて以来、研究によって発展し、プライバシーを保ちながらデータの信頼性を確保する手段として注目されています。

ZKPは、ある情報を知っていることを、その情報の内容を明かさずに他者に証明する暗号技術です。プライバシー保護のニーズや、クラウド上でのデータのセキュリティニーズ、そして昨今のブロックチェーンとの相性により、そのポテンシャルが再評価されてきています。

具体的には、ZKPを使うことで、ユーザーは自分が特定の秘密情報(例えば、パスワードやデジタルアイデンティティ)を知っていることを証明できますが、その情報自体は公開せずに済みます。これにより、第三者がその情報を知ることなく、ユーザーが正当な操作を行っていることを検証できます。

例えば、あなたが銀行の窓口に行った際、あなたはその銀行の口座を持っていることを通帳やキャッシュカードを行員に渡すことで証明することができます。

しかし、ZKPの技術を使えば、そういった情報を直接やり取りせずとも、あなたが口座保有者であることを証明できます。しかも、行員はあなたが銀行口座を持っていることのみを知り、その他の情報へのアクセスを制限することができます。つまり、プライバシーを保ちながらデータの信頼性を確保することができます。

 

 

web3の文脈で取り上げられるZKPには以下のようなものがあります。

zk-SNARKs(Zero-Knowledge Succinct Non-Interactive Argument of Knowledge)

・短い証明で非対話的に知識を証明できる
・ブロックチェーンのプライバシーを強化し、トランザクションの詳細を隠しながら正当性を証明することができる
・Zcashなどの暗号通貨で使用されています

zk-STARKs(Zero Knowledge Scalable Transparent Argument of Knowledge)

・zk-SNARKsの進化形で、Trusted Setupを必要としないため、より透明性が高い
・大量の計算を効率的に行い、その結果の正しさを迅速に証明・検証できる

 

私たちが注目したい点としては、ZKPはその名称からプライバシー保護、データセキュリティの側面を先にとらえられがちですが、それ以外にブロックチェーンの文脈では「スケーラビリティ問題」を解決する手段としても用いられます。

例えば、以下のような効果が期待できます。

効率的なデータ検証
ZKPを使用すると、トランザクションの正当性を証明するために必要なデータの量が大幅に削減されます。これにより、ネットワークの負荷が軽減され、トランザクションの処理速度が向上します。

トランザクションの圧縮
多数のトランザクションを一つの証明にまとめることで、ブロックチェーン上でのデータの量を減らします。これにより、スケーラビリティが向上し、ネットワークの混雑が緩和します。

2024年もこの技術がブロックチェーン技術の実用性を高め、広範囲なアプリケーションへの適用を可能にし、更に多くの人がweb3の要素を(その詳細は知らずとも)利用することになるでしょう。

DePIN

DePIN(Decentralized Physical Infrastructure Network)とは、物理インフラが必要な経済にweb3の仕組みを活用したプロジェクトの総称です。”分散化された物理的なインフラのネットワーク”に焦点を当てており、現実世界のインフラをブロックチェーンを利用して向上させようとするプロジェクトを指します。ブロックチェーンを活用した様々なユースケースが出てきている中、2022年の9月に初めて名付けられ、2023年の後半から再び注目を集め始めています。

DePINのプロジェクトの例として、以下のものが挙げられます。

1. Filecoin(FIL):
分散型ストレージネットワークであり、世界中の空きストレージを利用してデータを保存することができます。ユーザーはストレージを提供することでトークン報酬を得ることが可能です。

2. Internet Computer(ICP):
分散型コンピューティングプラットフォームで、インターネット自体をグローバルなコンピュータとして機能させることを目指しています。これにより、中央集権的なクラウドサービスに代わる新しい形のインターネットが実現される可能性があります。

3. Helium(HNT):
分散型IoTネットワークを構築するプロジェクトで、ユーザーは自宅にホットスポットを設置することでネットワークに貢献し、その対価としてトークン報酬を受け取ります。

4. Hivemapper:
分散型地図作成プロジェクトで、個人の運転手が車内に専用カメラを設置し、道路状況などの撮影で最新の地図情報データ等をシェアし、HONEYトークンを入手する仕組みとなっています。ユーザーは、自社の製品やサービスでこれらのデータをサポートするために、HONEYで支払います。

分散型物理インフラストラクチャーネットワークの概念の具現化とトークンエコノミーの活用を推進することで、これらのプロジェクトはそれぞれが特定の分野で革新的なソリューションを提供しています。また、これらのプロジェクトを通じて、DePINはweb3市場における重要な動向の一つとなっています。

 

そして、私たちがこのDePINに注目した理由は、web3のユースケースにはブロックチェーンという比較的一般の人には理解が難しいテクノロジーが使われているものの、このDePINにおいてはweb3の要素が今後「マスアダプション」という広く一般に適用されるようになるために、そういった難しい技術の側面を意識せずにユーザーが利用可能になるプロダクトを生む可能性を秘めていると感じたからです。

特に生活に根付いた物理インフラストラクチャーに関連するものに対してはユーザーは身近に感じることができ、また日々自身の行動の範囲の中に存在するものも多くあり、一人ひとりが行動(貢献)をしたものが役に立っていると感じやすいため、継続的に活用しやすいという側面もある、と考えています。

今後も、「分散」というと分かりづらいですが「みんなで」という視点で見た時、身近な物理インフラストラクチャーがブロックチェーン技術を使ってアップデートされていくのではないかと思います。

 

RWA

今回最後に取り上げるのがRWA(Real World Assets、リアルワールドアセット)です。

RWAとは、現実世界に存在する物理的な資産をブロックチェーン上でトークン化し、デジタルトークンとして表現するものです。RWAには、不動産や貴金属、芸術品などの有形資産のほか、株式や債券などの無形資産も含まれます。このトークン化により、資産の流動性が高まり、分散型金融(DeFi)と伝統的な金融システムの間の架け橋となることが期待されています。

RWAは、以下のような特徴を持っています。

伝統的な資産のトークン化:
RWAは、不動産や金融商品など、伝統的な資産をブロックチェーン技術を用いてトークン化します。これにより、資産の所有権をデジタル化し、取引の透明性と効率性を向上させることができます。

高い分散性:
RWAは、資産を小さな単位に分割できるため、多くの投資家が小額から参加できるようになります。これにより、新たな投資家層に投資機会を提供し、市場の拡大が期待されます。

取引・管理コストの削減:
RWAは、仲介業者を必要とせずに直接取引が可能になるため、取引や管理にかかるコストを削減できます。

グローバルな市場へのアクセス:
RWAはブロックチェーン上で取引されるため、地理的な制約がなく、世界中の投資家がアクセスできます。

 

これまで、比較的ブロックチェーンのユースケースはデジタル空間の中で活用されるものからはじまっていました。RWAは、ブロックチェーンの活用を拡張し、現実世界に存在する物理的なものに新たなオプションを付与する形で、それらの価値を維持、変化、向上などを実現します。

私たちの注目したポイントは「流動性」です。物理的に形あるものには様々な制約(分割できない、地理的制限など)がかかります。RWAは特に伝統的な資産とデジタル資産の間のギャップを埋め、新しい形の資産クラスとしての地位を確立する上で重要なものとなってくるでしょう。

 

おわりに

本記事では、web3市場の中でも特に注目すべきトレンドとして、ゼロ知識証明、DePIN、RWAの3つを取り上げ、それぞれの特徴や今後の展望について解説しました。2024年も、これらの動向がさらに進化し、多くの人々がweb3の恩恵を享受する一年になることでしょう。TISとしても、これらのトレンドを捉え、革新的なビジネスモデルの提案と実現に向けて、引き続き努力を重ねてまいります。web3の未来は、私たちの想像を超える速度で進化しており、その波に乗り遅れないよう、常に最新の情報を追い続けることが重要です。読者の皆様におかれましても、この新しい技術革命の一端を担う存在として、積極的に関わっていただければ幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

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