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ステージ・ゲートプロセスとは
はじめに
ここでは、新規事業立ち上げのプロセス「ステージ・ゲートプロセス」と当社でのその適応例を解説します。
新規事業立ち上げの全体概要を掴みたい方は、まず新規事業開発 ― ステージ・ゲートプロセスによる新規事業立ち上げを一読頂くことをお勧めします。
ステージ・ゲートプロセスとは
当社が新規事業開発に使用しているのは、「ステージ・ゲートプロセス」と呼ばれるプロセスです。
一般に、ステージ・ゲートプロセスは多産多死を前提に作られています。 プロセスを数段階の「ステージ」に区切り、ステージの間に「ゲート」を設け、そのゲートで事業アイデアをふるいにかけて絞り込んでいきます。 明確な基準を用い、ゲートで段階的に絞り込んでいくことで、以下のような投資の無駄を防ぎます1。
- 基準が明示されていない結果として、事業化の出口が見えないまま滞留してしまう
- 事業化目前になってから致命的な問題が発覚し、事業開発が中止に追い込まれる
- フィージビリティスタディではある程度の市場が見込めたが、市場の環境が変わり、試作品はできても顧客が見つからなくなる
TISのステージ・ゲートプロセス
当社で用いているステージ・ゲートプロセス(以下、本プロセスという)は以下となります。
ステージ・ゲートプロセス
市場トレンドの変化への対応や「死の谷」2を回避するため、事業化の見極め期間は6ヵ月に設定しています。 この期間に、リーン・スタートアップ手法3 4やデザイン思考を基に、アイデアのブラッシュアップから想定顧客像の構築、ニーズの仮説構築、プロトタイプ(試作品)を通じた検証、顧客に価値を提供できる最小限のプロダクト開発・実証実験を行います。 それぞれのフェーズにゲートを設け、有識者を巻き込んで次フェーズへ進むレベルに達しているかを審議することにより、事業化に向けた精度向上を図っています。
ここにはCPFやPSF等、さまざまな略語が登場しますが、これらはスタートアップのフェーズとして登場するものです。概要は以下の図をご参照ください5。
フェーズ
事業オーナーとプロダクトオーナー
事業オーナーはプロダクトオーナーと密な連携をするために、いわゆる5W1Hの言語化、ロードマップとビジョンの作成、目的達成のための計画を立案し、その計画に基づき資金を調達します。 プロダクトオーナーは、ロードマップから事業が目指す内容を理解し、システム開発における競争力を維持し利益を最大化するために必要な機能や改良の優先順位を判断します。 また、システム投資費用や必要期間について見積もり、それを実現する計画を事業オーナーにフィードバックします。フィードバックは事業オーナーから言われた通りの要件の実現の可能性のみに留まらず、エンジニアとしてプロダクトの1人目のユーザーとして事業オーナーに提案します。 プロダクト開発は受託開発ではありません。事業オーナーは自ら指示したプロダクトが単に構築されるのを期待するのではなく、プロダクトオーナーからのフィードバックを傾聴し、必要に応じて事業計画を修正すべきです。プロダクトオーナーも、事業オーナーからの事業計画を密に共有してもらいつつ、それに必要なプロダクトを検討し開発することが重要です。
- 金子浩明・久保裕史、「化学系ブティック型(領域特定型)日本企業へのステージゲート法適用の課題と提案」、Journal of the International Association of P2M、Vol.9、No.1、pp.95-105、2014 (2022年3月11日閲覧)↩︎
- プロダクトの開発・販売をするための資金や戦略・事業開発、エンジニア、営業、人材などの経営資源を適切に調達できず倒産に至ること。↩︎
- エリック・リース・伊藤穣一・井口耕二、『リーン・スタートアップ』、日経BP、2019。↩︎
- 田所雅之、『起業の科学-スタートアップサイエンス』、日経BP、2017。↩︎
- 「スタートアップ・フィット・ジャーニー 今どの段階にいて、何に取り組むべきかのガイド」(2022年3月14日閲覧)を参考に作成。↩︎