SDGs事業 001

本トレイルは、アップサイクル事業とSDGs事業共通のトレイルとなります。

このトレイルで達成したい目標

エンジニアリングチームメンバーはアップサイクル事業、SDGs事業の両事業に参加したばかりで、事業のコンテキストを全く理解できていない状態でした。 そのため、以下の達成を目標としました。

  • 事業に関わるメンバーについてお互いをよく知ること
  • 事業についてメンバー全員が理解すること
    • 事業の背景やどういった目標を持っているかの意識合わせをするため

また、新規事業開発では、事業テーマが抱える課題を発見し、その課題に対する適切なソリューションを提供する必要があります。 まずは「課題の発見」を目指し、このタイムボックスでは事業に関する以下の目標も掲げました。

  • 事業テーマに関するステークホルダーや想定顧客、競合サービスを発見すること
    • その顧客に対してどのような価値を提供できるかを明確にすること

目標を達成するために取り組んだことと、その結果

ここでは、それぞれの目標に対するアプローチと具体的な取り組みについて記録します。

  • 事業と事業メンバーについて全員が理解すること
    • チームビルディング
    • 事業アイデアへの想いの共有
  • 事業テーマに関するステークホルダーや想定顧客、競合サービスを発見すること
    • 関係者の調査・洗い出し
  • その顧客に対してどのような価値を提供できるかを明確にすること
    • ペルソナ分析のための準備

以降では、それぞれの取り組みの詳細について記載します。

チームビルディング

まずは、メンバー間の壁をなくし今後の議論を発展させる目的でチームビルディングを行いました。 チームビルディングで行った内容は以下です。

  • 自己紹介
  • スキルマップの作成
  • お互いが期待していることのすり合わせ

自己紹介

SDGs、アップサイクル事業には、それぞれ事業オーナーが一人ずつ立っており、両者には面識がありました。 そこに、やはりお互いに面識のあるエンジニアリングチームメンバーが新規参画する形になりました。

事業オーナーとエンジニアリングチームには一切面識がありません。 そのような中で、議論を活性化できる関係性を構築するにはどうしたらよいでしょうか?

その解決方法の1つとして、アイスブレークも兼ねた「ウソつき自己紹介」を実施しました。 「ウソつき自己紹介」では、まず各々3つ程度自分を紹介するキーワードを並べます。ただし、そのキーワードに必ず1つ嘘のキーワードを上げておきます。

次に、自己紹介を兼ねたキーワードに関するエピソードを順に語ります。聞き手はどのエピソードが嘘かを考えながら聞きます。

最後に、聞き手の間でどのキーワードが嘘のキーワードかを議論して答え合わせをします。

何が嘘なのかを真剣に考えながら自己紹介を聞くことになり、話を聞く真剣度が大きく変わりました。 また、嘘だと考えたエピソードが真実だったり、逆に真実と考えた内容が嘘であると判明する都度、その場は大きく沸きました。 嘘つき自己紹介を通して、互いのことを知るだけでなく、元々面識があった人・なかったの人の双方で距離感が縮まり、活発に意見交換できる土台が構築できたと考えています。

スキルマップの作成

今回のチームには以下のような特徴がありました。

  • 新規事業のビジネス領域を得意とするメンバーと、技術を得意とするメンバーがそれぞれ集まっている
  • 互いに、自分が得意でない領域にどのようなスキルが必要なのかを正確には理解していない

各人がどのようなスキルを持っているのかを早期に共有しておくことは、リスクの可視化、コミュニケーションの円滑化に有用です^1。 一方で上記のようなチームの特徴を鑑みると、この段階で詳細なスキル有無を共有するよりも、「我々はどのようなスキルを持ったチームなのか」をざっくりと理解する方が良いと考えました。

今回参考にしたのは、プロダクトデザイナーのスキルマップを考えてみたで例示されているレーダーチャート型のスキルマップです。新規事業開発に必要な「ざっくりとした」スキルを抽出し、以下のようなスキルマップを作成しました。

これをチームビルディングの場で共有し、なぜこのようなマップとしたのかをメンバーごとに説明しました。

スキルマップを共有することで、事業にどういったスキルが必要なのかをメンバーそれぞれが理解できたことは大きな価値があった点です。 そしてもちろん、メンバー全員でどのような分野を得意・不得意としているのかを共有でき、「この分野についてはこの人に聞いてみよう」という相互理解が深まりました。 今後コミュニケーションを活発化する際にも、このようなベースラインの理解は大きな武器になると考えています。

また、レーダーチャート形式でスキルマップを表現したのは初めてでしたが、互いに関連するスキルを一箇所にまとめることで、各メンバーの強みと弱みがより「見える化」されます。 これは、チームとしての強みと弱みの「見える化」も意味しており、「リスクの可視化」という意味でも有用に感じました。

お互いが期待していることのすり合わせ

最後に以下のようなフォーマットを用いて、お互いが期待していることのすり合わせを行いました。

この期待のすり合わせの狙いは以下になります。

  • お互いに期待していることが明確になり、それぞれのメンバーが責任を持って期待に応えることができる
  • 自分自身に過度な期待を押し付け、プレッシャーに潰されてしまうことを防止する

まだ事業開発は始まったばかりで、この狙いが達成できたのかは判断できていません。 しかし、「自分(たち)はここが期待されているのか」という発見は間違いなくありました。 「発見があった」という事実は、このすり合わせがなかった場合にはミスマッチがあったことを示唆します。このため、「期待のすり合わせ」を行えたことは、肯定的に受け取っています。

事業アイデアへの想いの共有

「アップサイクル」や「SDGs」といった事業アイデアになぜ着目したのかを、事業オーナーから話してもらいました。

エンジニアリングチームのメンバーにとって、「アップサイクル」や「SDGs」の領域はこれまで縁遠いものでした。 このため、「本当にその事業アイデアで勝ち目があるのだろうか」という疑いの目があったことは否定できません。

新規事業開発の上では、チーム全員が「この事業を成功させる」という強い想いを持ち、当事者として最善となるアイデアを模索することが必要だと考えています。

リーンキャンパスとしの効果として大事なのは、当事者としてアイデアの磨き込みに貢献することによるメンバーの納得感と、アイデアの”自分ごと”化ができることである。高い共通理解はコミュニケーションの齟齬を減らし、アイデアを磨くスピードをあげることにもつながる。

田所雅之, 起業の科学 スタートアップサイエンス, 日経BP, 2017.

今回、各事業アイデアに関する事業オーナーの強い想いとその領域における各国・競合他社の概況を聞くことができ、それぞれの事業アイデアが「遠い世界」のことではなくなりました。 まだ「強い当事者意識」までたどり着いてはいないものの、事業オーナーの想いを受け、事業開発へのモチベーションは高まりました。

関係者の調査・洗い出し

新規事業開発の上では、事業アイデアの領域における想定顧客や顧客の潜在的な課題を発見し、具体的な事業のイメージを膨らませていく必要があります。 これは、360度の自由度の中から、事業の方向性を絞り込んでいくプロセスです。

このような自由度の高い選択をする上では、自分たちの想像だけに頼ったところで良いアイデアは生まれません。 今回は、「アップサイクル」「SDGs」という各領域における競合となり得る事業、ステークホルダー、想定顧客を調査することから始めました。

まずは、アップサイクルやSDGsの関連キーワードを洗い出し、そのキーワード検索の結果から調査しました。 例えば、SDGsのキーワードとしては以下のようなものが挙がります。

  • エシカル
  • サステナブル

現在はまだその結果を集約しているところですが、今後はその結果を元にして以下のような活動をする予定です。

  • 競合となり得る事業を発見した場合
    • どのような価値を提供しているのかを確認し、自分たちの事業アイデアのヒントにする
  • ステークホルダーを発見した場合
    • インタビューすることで、事業アイデアの領域に対する課題の発見・ブラッシュアップを行う
    • 可能な場合はパートナーシップを結ぶことで、提供価値を拡大する
  • 想定顧客を発見した場合
    • インタビューすることで、事業アイデアの領域に対する課題の発見・ブラッシュアップを行う
    • 想定顧客の価値観について仮説を構築するインプットとする

ペルソナ分析のための準備

今後、顧客に対してどのような価値を提供できるかを明確にするため、想定顧客のペルソナ分析を実施する予定です。

本タイムボックスではペルソナ分析の準備として、想定顧客を以下の3つの層に分けました。

  • 一般ユーザー
    • 事業テーマのことをよく知らない、もしくは事業テーマを知っているが具体的な行動を取っていない顧客
  • アーリーアダプター
    • 事業テーマに関心があり、具体的な行動をしている顧客
  • リードユーザー
    • 事業テーマの先駆者となる存在、もしくは専門的な顧客

こうした層に分けることで、ペルソナ分析の際に想定する顧客をイメージしやすくなります。 インタビュー対象としては、アーリーアダプター層やリードユーザー層を考えています。 これは、一般ユーザー層に事業テーマのことをヒアリングしても潜在的な課題を持っていない、もしくは気づけていないのではないかという仮説を持っているからです。

トレイルで得られた学び

この期間で行った取り組みと結果からは、以下のような学びを得ました。

チームビルディング等で互いの想いや考えを共有することは重要

各メンバーが事業に対する想いを共有するのは新規事業開発において極めて重要なことだと考えています。 今回、事業オーナーが新規事業に込めている想いを共有できたことは、その最初の一歩目を踏み出すものであり、どの事業開発においても必須だと考えています。

また、事業開発のメンバーが一体となって事業の成功を目指して動くためには、相互理解が欠かせません。嘘つき自己紹介やスキルマップを通して互いのバックグラウンドや得意・不得意を理解し、コミュニケーションの基盤を作ることは、今後のチーム活動を見据えると極めて有用でした。

課題発見の前に、実施する準備や検討が必要

新規事業開発では「自分たちから見える課題」に取り組みがちですが、潜在的なユーザーが抱えている課題の種類は想像以上に多いはずです。 このため、事業で取り組むべき課題を課題を発見するためには、自分たちの目の前に転がっている課題ではなく、世の中の潜在的ユーザーが「実際に」抱えている課題から事実ベースでヒントを得なければなりません。

そのためには、どのような潜在的ユーザーがいるのかを調査するだけでなく、それぞれがどのような側面で課題を持っているのかを仮説を立て検証していく必要があります。 事業開発に関するエンジニアリングというとシステム開発の観点に目を奪われがちですが、そもそも事業としてどんな課題に取り組むかを決める前にも、こうした仮説検証を繰り返す必要があるという点を学びました。


[^1]: スキルマップ運用ガイド